感染の再拡大防ぎ、生活と生業への支援拡充を
県当初予算の特徴と問題点=木佐木大助、藤本一規両県議に聞く
山口県の2021年度当初予算は、3月12日閉会した2月定例議会で採択されました。総額は前年度当初比788億円(11・7%)増の7529億円です(下表)。村岡嗣政知事は「コロナ禍というピンチをチャンスに変える」と強調しました。しかし、新規事業は菅政権が看板に掲げる「デジタル改革」に特化するなど、国追随の姿勢が目立ち、県民福祉の増進は二の次、三の次です。特徴と問題点を日本共産党の木佐木大助、藤本一規両県議に聞きました。
検査拡充、生活支援に万全を=デジタル化 個人情報保護が大前提
―コロナ禍で、初めての予算編成になりました。
財源不足対策は十分に
木佐木 歳入では、コロナ感染症の影響による企業収益の減少で、法人二税は107億円(27%)、地方譲与税も92億円(34%)減少します。一方、地方交付税は256億円(13%)増の2201億円、コロナ対策を含む国庫支出金も287億円(34%)増の1125億円措置されました。コロナ禍の影響による減収には十分な対策が講じられていると思います。
―村岡知事は、予算編成の基本的な考えとして「感染拡大の防止と経済活性化の両立を図り、ピンチをチャンスに変え、県づくりの取組を加速化させる」と強調します。
感染防止策は改善余地
藤本 コロナ感染拡大の防止対策では、検査体制の確保と医療供給体制の強化が図られますが、まだまだ改善の余地があります(3回目に「解説」)。
緊急対策の継続が必要
―県民生活の面では。
木佐木 生活が困窮した人を対象にした小口資金貸付は1月末までに5千件と例年の130倍を超えるなど、コロナ禍は県民生活に深刻な影響を広げています。貸付限度額の引上げや返済猶予などの緊急対策の延長が必要です。生活保護制度の扶養照会をやめさせるなどの改善も課題です。
―売上減少等で困っている中小事業者向けの対策は。
事業者へ給付金支給を
木佐木 消費喚起策として昨年7月から発売したプレミアム宿泊券・フェリー券を再度、発行する事業に約17億円計上しました。発売開始時期は未定としていますが、感染拡大を招くことがないように慎重な対応が必要です。一方で、飲食店などを対象にした給付金支給は見送られました。広島県は、売り上げが減った事業者向けに市町が支援金を出す場合、半額(15万円以内)を補助する制度を実施します。山口県もこうした支援策を検討すべきです。
「デジタル改革」に特化
―知事が言う県づくりを加速化させる取組は。
藤本 新規施策は菅政権が看板にする「デジタル改革」に呼応した「デジタルトランスフォーメーション(DX)」=デジタル技術による改革に特化しています。推進拠点を山口市に整備し、子育て、教育、介護・福祉、防災、中小企業支援、農林漁業、防災、行政手続き、県民相談などあらゆる分野で「DX」の取り組みを強化しようとしています。
国の狙いは個人情報管理
―菅政権が「デジタル改革」を進める目的は何でしょう。
木佐木 デジタル技術は住民生活の向上や地域経済の再生に活用できる可能性を持っていますが、一方で、政府はマイナンバーの活用範囲の拡大と自治体クラウド等を通じて、地方自治体と国機関が持つ国民の個人情報を一元的に管理することをねらっています。その個人情報が財界や特定企業のもうけのために利用される危険もあります。
個人情報保護が大前提
―それだけに個人情報保護が重要になります。
藤本 デジタル化で先行しているEUは、事業者の個人情報漏えい事実の消費者への通知義務と十分な被害救済の仕組みの整備、情報の自己決定権、「データ共同利用権」の排除などを盛り込んだ「一般データ保護規則」(GDPR)を定めています。EU並みの個人情報保護の制度を整備しないまま、「デジタル化」が進められると、個人のプライバシーが侵害され、ひいては、日本が監視社会にされる恐れがあり、警戒が必要です。
(続く)