■2019年6月議会報告:討論(木佐木大助議員)_その6

 請願第5号は、教職員の長時間過密労働解消のため、1年単位の変形労働時間制の導入ではなく、定数の抜本的改善を求める意見書の提出を求めるものです。

教職員の長時間過密労働の解消は定数の抜本改正で

 国が2016年に小中学校を対象に実施した「教員勤務実態調査」によれば、教員は月曜から金曜まで毎日、平均12時間ちかく働き、休みのはずの土日も働いています。副校長・教頭の勤務は、さらに過酷です。

 学校では“誰かが午前2時、3時に退勤して鍵を閉め、別の教員が午前5時、6時に出勤して鍵を開ける”“仕事が終わらず泊まり込む教員がいる”といったことも起きています。

 忙しすぎて教職員同士がコミュニケーションをとる時間がなく、ギスギスした雰囲気の職場も増えています。県内でも休職者全体のうち、精神疾患による休職者は高い割合を占めています。まさに、教員の長時間労働は限界に達しています。

 教員の長時間労働は、子どもや保護者にとっても深刻な問題です。

 何より、授業準備の時間が足りません。「調査」では、小学校教員は1日6コマ分近い授業をしていますが、準備は1時間17分です。これでは、適切な教材研究ができません。

 また、「先生、遊んで」「先生、話をきいて」という声に応じたり、いじめなどの深刻なケースに対応するための、時間や心の余裕がなくなっています。保護者と意思疎通をはかるための時間も、十分にとれません。

 よって、①教職員の長時間過密労働を解消するため、国の責任で大幅な定数増を進めること、②義務及び高校標準法を改正し、教職員定数改善計画を策定すること、③1年単位の変形労働時間制導入のための法整備を行わないこと、を求める意見書を提出することは焦眉の課題であり、不採択とした委員長報告に反対します。

(2019年6月28日)

(請願第5号)職員の長時間過密労働解消のため、1年単位の変形労働時間制の導入ではなく、定数の抜本的改善を求めることについて

 2018年の厚生労働省「過労死等防止対策白書」によれば、小・中・高・特別支援学校を含めた全ての学校の教職員の一日当たりの実勤務時間の平均は、通常時でさえ1日11時間17分(所定勤務時間は7時間45分)である。1カ月当たりの時間外勤務の平均は77時間44分と、極めて深刻な事態である。

 長時間過密労働は、教職員を肉体的・精神的に追い詰め、子供と向き合い、教育活動に専念することを困難にしている。「教材研究ができなく、子供たちに申しわけない」「あしたの授業準備さえままならない」などの悲痛な声が学校にあふれている。今や、長時間過密労働は教職員の労働問題や健康問題にとどまらず、「教育の質」を確保し向上させる課題にも影響を及ぼしている。

 こうした状況の背景には、「全国学力・学習状況調査」等を中心にした過度な競争主義や、学習指導要領の押しつけによる管理・統制などがある。長時間過密労働を解消し、教職員の命と健康を守るとともに、子供たちに行き届いた教育を実現するために、教職員定数の抜本的改善は欠かすことのできない課題である。

 本年1月25日、中央教育審議会が「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」答申を行った。文部科学省は「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」を策定し、通知を発して、これらの具体化を地方教育委員会と学校に求めている。しかし、これらの施策には教職員定数の抜本的改善がない。

 また、通常の勤務時間を延長し、かわりに夏休みなどの勤務時間を縮める1年単位の変形労働時間制の導入が提案されている。この制度は1日8時間労働の原則を崩し、長時間労働を一層助長してしまうものであり、文科大臣は「教師の業務や勤務が縮減するわけではない」と述べている。地方公務員は適用除外とされているが、文科省の工程表によれば、今年度中の法整備が予定されている。

 2020年度から順次、改訂学習指導要領が本格実施され、小学校英語やプログラミング教育の導入等による授業時間増と教職員の負担増が心配されている。今、求められているのは、1年単位の変形労働時間制の導入ではなく、教職員定数の抜本的改正である。

 以上のことから、下記事項について、国に対し意見書を提出されるよう請願する。

1 教職員の長時間過密労働を解消するため、国の責任で大幅な定数増を進めること。

2 義務及び高校標準法を改正し、教職員定数改善計画を策定すること。

3 1年単位の変形労働時間制導入のための法整備を行わないこと。

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