日本共産党県議団を代表して討論を行います。
11議案のうち、3議案に反対
本会議に提案された11議案のうち、議案第2号、5号及び9号の3議案に反対し、残る8議案と意見書4件については賛成します。
まず、賛成する議案のうち、議案第1号、一般会計補正予算に関して意見を述べます。
コロナ対策、災害対策の補正予算には賛成
補正予算(第5号)の総額約179億円のうち新型コロナウイルス感染症対策関連事業に約126億円、7月豪雨災害対策関連事業に約48億円が計上されました。
わが党は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止と県民のくらし、営業を守る観点から、3月以降、4回にわたって県当局に対し、数多くの提言・要望を行ってきました。4月臨時議会、6月議会、そしてこの9月議会に提案された補正予算に、その多くが盛り込まれたことは、一定評価するものです。
その上で、本議会での質疑を通じて、なお、必要な課題について取り上げます。
地方税財源の確保を
第1は、地方税財源の確保です。
わが党は、本会議質問で地方税財源の確保・充実を国に要望するよう求め、県は「新型コロナ対策等に必要な財源の重点的な確保など、地方が持続可能な財政運営を行っていけるよう、今後もあらゆる機会を捉えて国に要望していく」と答弁されました。
一方、総務省は9月23日、来年度予算概算要求で、地方交付税を今年度比で約4000億円少ない約16兆2000億円とし、財源不足を補うため臨時財政対策債は約3兆7000億円増の約6兆8000億円とする方針を固めた、と報道されています。
これでは地方財政が大幅に悪化することは避けられません。
コロナ禍で企業収益は悪化していることは事実ですが、安倍政権の7年8カ月で大企業の内部留保は300兆円から600兆円に倍増しています。この間、実施された大企業に対する減税を元に戻すなどの措置をとり、地方交付税収入を確保するなどの措置をとるよう国に要望するよう求めます。
PCR検査体制は大規模に拡大を
第2は、冬に向け、感染拡大防止と経済活動の再開を両立させるため、PCR検査体制を大規模に拡充することです。
本会議でも指摘しましたが、中国5県の人口10万人当たりの陽性者数と千人当たりの検査人数を比較すると、鳥取県は陽性者数6.5人、検査人数9.4人に対し、山口県は陽性者が2倍以上の14.4人なのに、検査人数は7割の6.5人に留まっています。遅れは明らかです。
補正予算には季節性インフルエンザ流行期に想定される1日最大4000人の発熱患者に対応するための検査装置の導入や民間検査機関の活用、地域の診療所等が行う抗原検査の活用、さらには地域・外来検査センターの拡充のための予算措置が講じられていることは評価し、一刻も早い対応を求めます。
マンパワー確保し、長時間労働の解消を
しかし、問題はマンパワーです。本会議でも取り上げられましたが、新型コロナ対策に忙殺されている部局を中心に時間外勤務時間が増大し、月266時間に達した職員もおられました。時間内勤務時間が約160時間ですから、月勤務時間は約430時間になります。30日間、休まずに働いたと仮定しても1日の勤務時間は約14時間に及びます。まさに過労死の危険を伴う状況です。
県は、「長時間労働の是正と職員の健康維持を図ることとしている」と答弁されましたが、少なくとも月80時間以上の時間外勤務を放置することは許されません。時間外勤務の解消に必要な人員を早急に確保するため十分な予算をつぎ込むべきです。
GIGAスクールには懸念も
議案10号及び11号は県立学校の児童、生徒等にタブレット端末を配布するための物品の買い入れです。
コロナ禍でのオンライン授業やICT教育の推進のための必要性は理解しますが、一方で危惧される問題もあります。
1つは、政府がICT教育の推進のため打ち出している「GIGAスクール」構想です。この構想に対し教育の専門家からは、公教育への企業の参入が進み、集団的学びがおろそかになり、画一的な教育につながるとの懸念も出ています。
2つは、ICTに不慣れな教師にとっては、精神的負担になります。強引な導入は、教師の新たなストレスと多忙化につながり、働き方改革に逆行します。
「どういう授業をするか」「事前にどのような研修を受ければよいのか」と不安の声も挙がっています。
ICT教育を推進するためには、機器の使い方やICT時代に対応した授業設計や実践教育のあり方をしっかりと現場に徹底し、教職員の多忙化解消と両立した形での取り組みを要望します。
次に反対する議案についてです。
県事業の市町負担金は廃止すべき
議案第2号は、今年度の建設事業に要する経費の一部負担を市町に求めるものです。
2010年度から事務費にかかわる負担金を市町に求めない改善が始まりましたが、それでも今年度の負担金総額は38事業で31億2000万円にも上っています。
コロナ禍、県内すべての市町が、住民負担の軽減や地域経済の立て直し、少子化対策などの独自施策を展開しています。せめて、建設事業に要する経費の一部を市町に負担させる制度は廃止して、市町の財政を側面支援すべきであり、反対します。
マイナンバーは立ち止まって見直せ
議案第5号は、いわゆるマイナンバーの利用に関する条例改正です。
この間、政府は、マイナンバーカードの普及を進めるために、このカードに様々なものを紐付けする法律改正を繰り返しています。今条例改正もその1つです。
マイナンバーカードはもともと、任意取得が原則だったわけです。そこに、あらゆる個人情報が全部圧縮されて詰め込まれることになると、当然、個人情報の侵害という問題が出てきます。
マイナンバー制度は2016年に運用が本格化しましたが、多くの国民はほとんど使う機会はなく、システムのトラブルも相次ぐなど制度のあり方そのものに対する疑念の声は絶えません。今一度、立ち止まって見直すべきであり、本議案に反対します。
不要不急の大型事業やめ、財源はコロナ対策に
議案第9号、一般国道490号道路改良工事の請負契約の一部を変更するものです。
同道路は、地域高規格道路として建設が進められている小郡萩道路の角力場トンネル工事に係わって、安全対策を追加するため、契約金額を4億3500万円余増額するものです。
わが党は、小郡萩道路については、不要不急の事業として、一貫して中止を求めてきましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の見通しが立たない中で、計画されている大型公共事業の見直しはいよいよ、急務となっています。
お隣の広島県は5月の段階で、新型コロナウイルス対策などの財源確保のために実施していた事業の見直しについて、事業費ベースで39億円を捻出したと発表し、今後は道路や橋を造るハード事業などを含めて見直す方針を示しています。
わが党は、必要な公共事業には大いに賛成します。しかし、本会議でも指摘したように、今日の財政状況の中では、「あったら便利」という不要不急の大型公共事業は抜本的に見直しを図るべきであり、本議案には反対します。
(2020年10月5日)