ダム事前放流のための治水協定について地方整備局からレクチャー

中国5県の12の一級水系で治水協定を締結

 国交省中国地方整備局は「既存ダムの洪水調整機能の強化に向けた基本方針」(2019年12月22日付)に基づき、利水ダムを含む既存ダムで「事前放流」を実施することにより、洪水被害を軽減するため、河川・ダム管理者や関係利水者との間で協議を進め、今年5月29日、中国5県の12の一級水系で「治水協定」を結びました(山口県内では佐波川、小瀬川の2水系)。

 「事前放流」とは、ダムごとに設定されている「基準降雨量」を上回る降雨量が予測される場合、気象庁が発表する予測降雨量をもとにダムに流れ込む総量を算出。同量を事前に放流し、ダム下流河川での洪水被害の防止・軽減を目的とするものです。事前放流の実施判断は、基準降雨量を上回る降雨が予測される3日前から行うことが基本とされています。

 日本共産党山口県議団の藤本一規県議と吉田達彦事務局長は6月19日午前、中国地方整備局(広島市中区)を訪ね、同局河川部の下山茂・広域水管理官、西尾正博・河川保全管理官の両氏からレクチャーを受けました。

 レクチャーを通じて理解が深まった第1は、放流ゲートが設けられていない「ゲートレスダム」も対象となることです。ゲートはなくても、一定量を放流できる「利水放流管」は設けられており、3日前から放流することで効果を上げることが可能です。

 第2は、事前放流を行った後、低下させた水位が回復せず、ダムからの補給による水利用が困難となった場合の対応措置が定められていることです。1つは関係利水者で構成される渇水調整協議会等で弾力的な水融通の方法を協議する、2つは代替施設による補給等により、できるだけ実害が生じないよう、あらかじめ対応策を検討しておく、3つは利水者に特別の負担が生じた場合に備えた損失補填制度を設けることです。なお、損失補填制度の詳細は国交省内で検討中とのことでした。

 第3は、2018年7月の西日本豪雨により、堤防が決壊し、50人を超える犠牲者が出た高梁川水系(岡山県)での取り組みです。同水系にある新成羽川ダムを管理する中国電力は昨年6月、事前放流の実施を決め、実際の運用も始まっていました。中国電力は仮に新成羽川ダムで事前放流を行っていれば、高梁川の水位を総社市日羽で約20センチ、真備町地区に近い倉敷市酒津で約10センチ下げられたと試算しています。

《参考資料》岡山・新成羽川ダムで6月中旬「事前放流」 中電、豪雨教訓に下流域浸水抑制(水源開発問題全国連絡会)

 第4は、県管理の二級水系にあるダムの事前放流にむけた「治水協定」の締結にあたって国交省は、「緊要性等に応じて順次実行していく」よう求めていることです(「既存ダムの洪水調整機能の強化に向けた基本方針」)。県管理の二級河川は106水系434河川にのぼり、40近いダムがあります。県内での「治水協定」に向けた取り組み状況を6月8日、県河川課に問い合わせたところ、「検討を始めたばかりで、白紙の状態」との説明でした。早急に「治水協定」締結に向けた取り組みを強化することが求められています。

《参考資料》山口県の管理する河川一覧

(2020年6月20日)

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