8月8日付の中国新聞に次のような記事が掲載されました。
ヒバクシャ署名 応じず 山口知事あらためて意向
山口県の村岡嗣政知事は7日の定例記者会見で、核兵器禁止条約の締結を全ての国に求める「ヒバクシャ国際署名」に応じない考えをあらためて示した。主催団体が設けた2020年の期限が迫る中、「核兵器禁止条約の交渉に参加していない政府のスタンスに沿った政治判断だ」と述べた。
村岡知事は、総務省官僚時代の02~05年に被爆地の広島市へ出向し財政課長を務めた。「被爆者の思いは理解しているが、手法はいろいろなやり方がある。政府の考え方も理解しており、署名しない考えは変わらない」と述べた。
ヒバクシャ国際署名を巡っては、島根県の丸山達也知事が7月下旬に署名に応じたことを表明。これまでに広島、鳥取を含む20府県の知事が署名している。
山口県原爆被爆者支援センターゆだ苑(山口市)の岩本晋理事長は「被爆者が多い山口の知事として署名しないのはおかしい。被爆者が減りゆく現状を重く受け止め、一日も早く応じるべきだ」と苦言を呈す。(2019年8月8日朝刊掲載)
被爆者の思いより、安倍首相への“忖度”が大事
村岡知事の姿勢は、核兵器の一刻も早い廃絶を求める被爆者や大多数の県民の願いより、核兵器禁止条約への参加・批准を拒否している安倍首相の意向を“忖度”する恥ずべき態度です。
加えて、米軍基地の拡大強化や上関原発の新設を事実上、容認し、イージス・アショアについても「国は丁寧な説明を」としか言わない―こんな県政はまっぴらです。
全国では20府県の知事が署名
ちなみに、ヒバクシャ国際署名に賛同している都道府県は、以下の通りです。
岩手県、宮城県、秋田県、山形県、茨城県、栃木県、埼玉県、神奈川県、長野県、滋賀県、京都府、兵庫県、奈良県、鳥取県、島根県、広島県、香川県、徳島県、長崎県、沖縄県
参考:記者会見のやりとり
8月7日の記者会見の関係部分のやりとりは、次のものです。
◎中国新聞
昨日が広島に原爆が投下されてから74年目の広島の原爆の日だったんですけれども、「ヒバクシャ国際署名」に応じるか否かについて、島根県知事の方が7月22日ですかね、応じられたということが報道されているんですけれども、村岡知事については、全国で3番目に被爆者が多い県として、県知事さんとしてこの国際署名に応じる考えというのはいかがでしょうか。
●知事
そこは従来の考え方と変わってるものではないわけでして、国の方で。
◎中国新聞
核禁止条約の交渉に参加するということが、今のところは世界に示していない。
●知事
そうですね。その政府のスタンスを踏まえて、われわれは今、われわれというか署名については行っていない状況ですので、それについては考え方が変わったものではないということです。
◎中国新聞
今まで県内被爆者団体からの働きかけというのは何度も受けてこられていますか。
●知事
その署名についての話というのは最近はどうか知りませんけれども、何年か前、去年とかですかね、一昨年ですかね、ぐらいには報告があったと思います。
◎中国新聞
その都度、署名はしないという意向は伝えてこられた。
●知事
そうですね。それはもちろん核兵器の根絶とかですね、廃止ということについては、基本的にしっかり追及していかなければいけないのかなというふうに思いますけれども、その実現の方法については、政府としての基本的な考え方がありますので、それをしっかりとやってほしい、そういう思いでおります。
◎中国新聞
中国地方の他県の知事さんが署名されたからといって、村岡知事のスタンスが変わるわけではないということですか。
●知事
そうですね。
◎中国新聞
知事も以前広島市で財政課長をやってらっしゃった経験があるようで、当然その被爆者の思い、広島の思いには理解があるというふうにそう理解しているんですけれど、その上でですね、被爆者が生きているうちに世界から核兵器をなくす、核兵器のない世界を実現する、この「ヒバクシャ国際署名」の意義についてはですね、どのように考え受け止めていらっしゃるのか、それをお聞かせください。
●知事
もちろんそれぞれの団体がですね、いろいろな思いを持って核兵器のない世界をつくっていきたいということは、とても重要なことだというふうに思っておりますので、その活動自体はですね、その思いについては理解するところであります。その実現のための手法についてはいろいろなやり方があるので、そこについてはですね、政府としての考え方というものも私は理解をしていますし、ぜひその方法で実現してほしいと思っているところです。
◎中国新聞
現時点でですね、47都道府県のうち20の知事がこの署名については応じていらっしゃるんですけれども、その中で応じられないというのは、あくまでも政治家としての知事の判断で応じないといったところですか。
●知事
そうですね。
◎中国新聞
期限が2020年というふうにもう区切られていますけれども、それまでに知事が翻意なさることはあり得ないんですか。
●知事
基本的な考え方をこれまでも申し上げているとおりですけれども。その考え方でこれからも対応していきたいと思います。
(2019年8月10日記)