扶老会病院でのクラスター対策強化とPCR検査の拡充を
宇部市船木の「扶老会病院」(精神科・一般50、療養116、認知症108の計274床)で1月16日以降、発生した新型コロナの集団感染(クラスター)は、日を追うごとに広がり、3週間を経過した現在も新たな感染者が確認されるなど、終息の目途がつかない状況です。陽性者は2月8日現在、190人に達しています。同病院の入院患者と職員及びその家族はもとより、周辺地域の住民の不安も高まっています。
こうした状況を踏まえ、日本共産党山口県議団と同宇部市議団は、県知事に対し、「高齢者施設等でのクラスター防止対策とPCR検査の拡充を求める要請書」(下記)を提出し、担当職員から同病院でクラスターが広がった要因やこれまでの対応について、レクチャーを受けました。(要請事項1)以外は後日、文書回答
《要請事項》
1、扶老会病院において新型コロナ感染が拡大した経緯とその要因、県が講じてきた対応策について明らかにすること。
2、厚労省の事務連絡「高齢者施設等への重点的な検査の徹底について(要請)」(2020年11月19日付)にある「 高齢者施設等の入所者又は介護従事者等で発熱等の症状を呈する者については、必ず検査を実施すること。当該検査の結果、陽性が判明した場合には、当該施設の入所者及び従事者の全員に対して原則として検査を実施すること」に沿ったPCR検査の実施実績を明らかにすること。
3、扶老会病院での集団感染を教訓に、①医療機関、介護施設など、クラスターが発生すると多大な影響が出る施設等に「危機管理対応マニュアル」の徹底を改めて求めること。②入所者、従事者全員を対象にした「社会的検査」を行うこと。その際、保健所の負担を軽減するため、民間機関も活用した「自主検査」も併用すること。
4、新型コロナ感染者の治療、看護にあたる医療従事者が家族への感染防止のため、ホテルなどに宿泊する場合は、その経費を全額補てんすること。
この要請には、木佐木大助、藤本一規両県議、荒川憲幸、時田洋輔両宇部市議、河合喜代県副委員長、吉田達彦県議団事務局長が参加。健康福祉部新型コロナウイルス感染症対策室の担当職員が応対しました。
同病院の入院患者の特性からクラスターが拡大
クラスターが発生し、その後も新たな感染確認がさみだれ的に続いている要因について、担当職員は、
①同病院の入院者の大多数は、認知症や精神疾患を患っているため、日常的に共有スペースに集まっていることが多かった、
②新型コロナに感染した患者のうち、病状が重い人は感染症病床がある病院に転院させているが、軽症または無症状の人は受け入れられる病院がないため、転院させられない、
③このため病院内にレッドゾーンとグレーゾーンを設けて、軽症または無症状の人はレッドゾーンに隔離し、観察しているが、病気の性質上、動き回り、グレーゾーンに入ることもある、などの状況を説明しました。
医療体制を維持するため関係機関の協力で最大限の支援を実施
クラスター発生後の支援について県の担当者は、①同病院で2名の感染者が確認されたことを受け、全ての入院患者と職員を対象にPCR検査を実施(約400人)、②県クラスター対策チームを派遣、③県精神病院協会、県看護協会の協力を得て、医師、看護師の派遣体制をつくり、医療体制を維持、④事務職員の感染者が相次いだことから、県の事務職員を派遣、⑤県総合医療センターの内科医を中心としたDMAT(災害派遣医療チーム)を派遣、などの対応をしていると説明しました。
風評被害を防ぎ、終息が確認されるまで支援の継続を
参加者は、この間の県の対応を評価した上で、①同病院の職員であることを理由に受診を拒否されたという事例も聞いている。県としても適切に対応してもらいたい、②同病院の敷地内には、高齢者施設も併設されており、敷地内の施設全ての入所者と職員を対象としたPCR検査を実施する、③同病院への支援については、クラスターの終息が確認されるまで継続させる、ことなどを要望しました。
(2021年2月9日)