原発新設の規制基準の策定は「労力の無駄」
●原発の再稼働の審査に関わって、「敷地内及び敷地周辺の地質・地質構造調査に係わる審査ガイド」(2013年6月)で「鉱物脈法」を採用した経緯と、この手法の概略の説明を求める
2011年3月11日の東日本大震災による福島原発事故を受け、同年4月11日には福島県浜通り地震が発生した。この地震のメカニズムは、逆断層ではなく、日本では想定していなかった正断層地震で横ずれが発生した。
そのため、調査した結果、この断層は東京電力も制度設計上、考慮する断層とは評価されていなかった断層であったため、今後、断層を評価する際、より詳しく活断層の構造をよく見る必要が生じたため、手法の1つとして、鉱物脈法が取り上げられた。
従来の「活断層等」の判断基準としては、「上載地層法」の手法をとってきた。若い地層あるいは、その下部の12~13年前の地層がずれているか、いないかで評価してきた。ずれていれば活断層、ずれていなければ、活断層ではない。これを確認事項としてきた。この方法だと、より下部にある古い地層の評価が難しい。
「鉱物脈法」については、2013年に審査ガイドを示す前の2006年には石渡教授が取り上げており、認識されていた。事業者の方も、そういう認識をもっていたが、本格的に取り上げられるきっかけになったのは、浜通り地震であり、その後、審査ガイドにつながった。
●原発の新設に係る「新規制基準」は定められているのか
新規制基準は既設の原発を念頭に作成されたもの。政府は、新増設は想定していないという方針であり、わざわざ労力を使って、新設のための「新規制基準」を策定する必要はないと考えている。検討もしていない。
このことは、今年2月の国会での質疑でも答弁している。
もし新設の規制基準をつくることがあっても、いまの基準より弱まることはありえないのは当たり前と考えている。
●現時点における上関原子力発電所新設計画に伴う原子炉設置許可申請の審査状況を明らかにされたい
上関原発の原子炉設置許可については平成21年12月、申請がされており、その後、原子力保安院から原子力規制庁に移行したが、附則において、原子力規制庁に申請されたものとみなすとされている。
審査は行われておらず、新規制基準に沿った「補正」や中国電力からのアクションはなにもない。
「補正」や再提出など色々、方法はあるが、いまのところ、動きはない。
●国は、重要電源開発地点指定の要件として、「申請する地点の電源について供給計画に記載がされている」、「電源開発計画の具体化が確実な電源である」ことをあげている。しかしながら、中国電力は「2019年度供給計画」において上関原発は「未定」とし、新規制基準に沿った原子炉設置許可申請及び「変更申請」も提出していない。こうした事実があるにも関わらず、国は中国電力の問い合わせに対し、「上関原発の国のエネルギー政策上の位置付けが当初免許時と変わることなく存続し、今後も存続する見通しである」という見解を示しているのはなぜか。
重要電源開発地点指定の要件は12あり、そのうちの一つ、確かに供給計画には時期は「未定」と書かれているが、他のページに「取り組んでいく」と書かれているし、供給計画に書かれていると言うことは、検討していると言うことだし、「未定」をもって供給計画に記載はないということではない。
この制度は、もともと、指定することにより、手続きの円滑化をはかることが目的。指定するにあたって、様々な要件があり、申請時にそれをクリアしており、その後も、特段の変化がないことから有効と判断している。
もちろん、事業者が供給計画から外したとか、すれば、指定から外れることにはなる。逆に言えば、今はそういう状況ではない。
(以上)