検証:イージス・アショア配備の導入断念_1

イージス・アショア断念ー住民の反対 政府追い詰める

 河野太郎防衛相は6月25日、防衛省内で記者会見し、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の秋田、山口両県への配備を断念することを24日の国家安全保障会議(NSC)で決定したと明らかにしました。さらに、「その他の代替地を見つけることは極めて困難」と述べ、国内での配備を完全に断念しました。技術的・財政的にも無謀な計画の破綻であり、配備候補地での住民・自治体の配備反対の声に追い詰められた結果です。

 今後、閣議で配備計画の撤回を正式に決めます。一方、政府は、「ミサイル防衛」のあり方など、新たな安全保障戦略について議論していく予定。25日の自民党国防部会では、違憲の「敵基地攻撃能力保有」を求める声が相次ぎました。

 防衛省は同部会で、配備候補地に選定した陸上自衛隊新屋(あらや)演習場(秋田市)と陸自むつみ演習場(山口県萩市、阿武町)を含めた20カ所の国有地について分析・検討した結果、これら全てで迎撃ミサイルから切り離した推進装置ブースターを敷地内か海上に確実に落下させることは困難であり、代替地を見つけることも困難だとして、配備を断念したと説明しています。

(ここまで、「しんぶん赤旗」2020年6月26日付)

ブースタを確実に落下させるには2000億円の費用と10年以上の歳月が必要

 日米両国が、イージス・アショアに搭載することを想定し、共同開発している迎撃ミサイル(SM-3ブロックⅡA・右図)は、一段目ブースター、二段目、三段目ロケットから成る三段式ミサイルです。

 一段目ブースターについて防衛省は、県知事、萩市長、阿武町長からの照会への回答や萩市、阿武町での住民説明会などで「演習場内に確実に落下させられる」と繰り返し説明してきました。

 しかし、河野防衛大臣は6月15日夕の会見で、「ソフトウェアの改修によって、落下させることができるという認識だったが、ハードウェアの改修をしなければ確実に落下させると言い切れないことが分かった」とのべ、コントロールするためには「2000億円の費用と10年以上の歳月が必要となり、合理的ではない」ことを理由に「配備プロセスの停止」を発表しました。

導入に当たって米側に、要求すらせず

 ブースター落下の危険性について防衛省は当初、問題視していませんでした。

 6月22日、参院決算委員会での日本共産党・井上哲士参院議員の追及によって、防衛省がイージス・アショア導入にあたって「ブースターを演習場内の安全な場所に落下させる」という仕様を米側に求めていなかった、と答弁したことは、その証左です。

 ○井上哲士君 このSM3ブロックⅡAは(日米の)共同開発ですけれども、ブースターを安全な場所に落下させるということは、このイージス・アショア導入に当たっての要求性能にちゃんと含まれていたのでしょうか。

 ○政府参考人(中村吉利君) 要求性能といたしましては、演習場内に確実に落下させるということは書き込まれていたということではありません。

「ブースターやロケットが演習場周辺に落ちることはないのか?」―説明会で出された疑問

 ブースターやロケット落下への不安が出されたのは、防衛省が2018年6月18日から萩市、阿武町で開催した地元説明会でした。住民から「一段目ブースターや二段目、三段目ロケットが演習場周辺に落下する恐れはないのか」という意見が出されました。

 このため、知事と萩市長は7月18日、防衛省に対する2回目の「照会」で「弾道ミサイルを迎撃した際、ミサイルの残骸の落下等により、地表に被害が出ることはないのか、具体的な根拠を示して説明されたい」と質しました。

(続く)

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