2020年度県予算の特徴と問題点_2

業者支援は融資頼み

立地企業には15億円の補助金

 ―中小業者への支援策は。

 吉田 最もウエートが高いのは制度融資で、新年度も570億円の新規融資枠を設けていますが、執行率が低く昨年度も26%に留まっています。経営基盤強化資金の執行率はわずか2%です。事業を拡大する体力が失われています。

 ―企業立地促進補助金は。

 吉田 新規立地や設備投資、新規雇用を行う企業に対して補助金を出す制度で、毎年15億円程度使われています。この12年間の累計では、膨大な内部留保をもつ武田薬品工業に21億円、ブリヂストンに10億円、三菱重工業に6億5千万円などが補助されています(表4)。こうした大企業は、補助金の有無で新規の立地や場所を決めません。交付対象から大企業は除外し、県内中小企業への支援を手厚くする方が、地域経済の振興につながります。

人材確保策では前進も

子育て支援の目玉は米一俵

 ―暮らしや福祉の施策は。

 吉田 深刻化する福祉現場の人手不足を解消するため、県外の看護学生などが県内の中小病院に就職し、継続的に勤務した場合、奨学金返還額の一部を助成する制度が創設されました(表5)。

 ―保育士も足りません。

 吉田 保育士については、県内の養成施設を卒業して、県内の保育所などで勤務する場合、入学や就職の準備金を貸し付け、5年間勤務したら返還免除する制度もつくられました(同)。

 ―周辺部では医師不足が加速しています。

へき地への医師派遣を支援

 吉田 地域医療を支える医師確保策として、民間の医師専門人材派遣会社を活用して、特に深刻なへき地への医師派遣体制をつくる事業が創設され、約1億1千万円計上されました。

 ―子育て支援は。

 吉田 目新しいのは、第3子以降の子どもを出産した世帯に米一俵(60㎏)を贈呈する「幸せ舞い米(しあわせまいこめ)」事業(表5)。どれだけの効果があるか、大いに疑問です。

 ―その他は。

 吉田 専門学校に就学する低所得世帯の子どもに、入学金、授業料を支給する制度は評価できます。また、私立学校運営費補助は、小中高校とも1人当たり4千円引き上げられました。

子ども医療助成制度 予算比は鳥取県の半分以下

 ―子ども医療助成制度は新年度も据え置かれました。

 吉田 新年度の事業費は約7億2500万円で、総額に占める比率は0・11%です。高校生卒業まで無料の鳥取県の0・26%と比べると半分以下。人口は倍以上なのに、事業費でも追い抜かれました(表6)。小学校就学前まで拡充した2004年時点では山口県は全国トップクラスでしたが、今では事業費も半分以下です。鳥取県は11年に中学校卒業まで、13年には高卒まで拡充しました。知事の姿勢が厳しく問われています。

(終)

(2020年3月22日付・山口民報掲載)

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