2022年9月議会・一般質問

安倍政治礼賛の県民葬は許されない

◎木佐木大助

日本共産党の木佐木大助です。質問の前に一言、申し上げます。
まず、私たちは安倍元首相への弔意表明、そのものに反対しているわけではありません。亡くなられた際には心からの弔意を表明しました。
しかし、事実として、安倍政権の8年8ヶ月は、戦後最悪の政権だったと言わざるを得ません。
憲法違反の安保法制を強行し、立憲主義を破壊しました。「モリ・カケ・桜を見る会」など国政私物化疑惑にまみれましたが、国会の場で、118回もの虚偽答弁を重ねるなど説明責任を果たしませんでした。アベノミクスで格差と貧困を広げ、消費税の2度の増税で国民の暮らしを苦しくさせました。さらに国際勝共連合や統一協会とズブズブの癒着関係をつくり、最大の広告塔ともなりました。
国葬と同様、県民葬は、こうした政治を礼賛することにつながるものであり、断じて許せません。県民葬は中止すべきことを申し上げて、通告に従い一般質問を行います。

県民葬について

◎木佐木大助

質問の第1は、知事の政治姿勢についてです。
1つは、県民葬についてです。
知事は、県民葬を行う法的根拠として、地方自治法の2条2項に「地方公共団体は地域における事務を処理をする」と規定しており、県民葬もその中に含まれている、と説明されています。
この「地域における事務」について、地方自治法の逐条解説は「住民を含め当該地域との合理的な関連性が認められれば、『地域における事務』であると考えられる」と明記しています。
法律を解釈する際は、関連する規定も参照して文言の意味を確定することが求められます。今回の場合は、地方自治法第1条の2第1項の規定がそれに当たります。同項は国と地方との役割分担に係る規定ですが、地方公共団体が所掌すべき事務、とくに「地域における事務」の基本的性格を示すものです。「住民を含め当該地域との合理的な関連性」の有無は、同項がいう「住民の福祉の増進を図ること」が認められるか否かによって判断すべきです。
よって、県民葬が「住民の福祉の増進を図ること」につながる「合理的な関連性」の根拠を示さない限り、県民葬を行う法的根拠は失われるのではありませんか。お尋ねします。

●内海隆明総務部長

県民葬についてのお尋ねにお答えします。
地方自治法第1条の2第1項において、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。」と規定されており、これは、地方公共団体の存立目的と役割を規定したものとされています。
また、同法第2条第2項では、普通地方公共団体は、地域における事務を処理するとされており、住民を含め当該地域との合理的な関連性が認められれば、「地域における事務」であると考えられているところです。
故安倍元総理におかれては、本県選出の国会議員として、憲政史上最長の8年8か月の長きにわたって内閣総理大臣の重責を務められ、我が国はもとより、地元山口県の取組にも大変な後押しをいただくなど、県政の発展にも格別の御尽力
を賜りました。
こうした故安倍元総理のご功績や、8日間で13, 800人を超える記帳が集まるなど、多くの県民の皆様が哀悼の意を示されていることを踏まえると、県民葬の開催は、県民を含めた本県との合理的な関連性があると同時に、お示しのあった地方自治法第1条の2第1項が規定する地方公共団体の存立目的と役割にも適合するものと考えています。

◎木佐木大助《再質問》

県民葬開催の法的根拠について、繧々答弁されましたが全く納得いきません。角度を変えて再質問します。
地方自治法の第2条第14項は、「地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」と規定しています。
同項の逐条解説は、「住民の福祉を向上させることは、そもそも地方公共団体の存立の第一義的な目的であり、これに努めなければならないのは言うまでもないことであります」と明快にしています。
同項に照らして、県民葬開催という「事務を処理」するための経費約6, 300万円の半額3, 150万円の公金支出は、 どのような「県民の福祉の向上」につながると考えているのか、伺います。
県民葬への公金支出は、「県民の福祉の向上」とは全く無縁であり、違法な支出であり、県民葬の開催そ中止すべきであります。

●内海隆明総務部長

県民葬への公金支出がどのような「県民の福祉の向上」につながると考えているのか、とのお尋ねであります。
先ほども申し上げましたが、故安倍元総理におかれては、憲政史上最長の長きにわたって内閣総理大臣の重責を務められ、我が国はもとより、県政の推進にも、大変なお力添えをいただきました。
また、ご逝去後の8日間で、13, 800人を超える記帳が集まるなど、多くの県民の皆様が哀悼の意を示されております。
こうしたことを踏まえまして、ご遺徳を偲び、我が国はもとより、本県への多大なるご貢献とご功績を称え、最も深く追悼の意を表する形として、県民葬を執り行うことは、お示しの「住民の福祉を向上させる」という地方公共団体の存立目的に適合するものと考えております。

◎木佐木大助《再々質問》

県民葬開催についての法的根拠は、地方自治法の窓意的解釈によって、成立しようとしていますが、法的根拠はありません。この点については、改めて内海総務部長に答弁を求めるとともに、県民葬を中止すべきだと考えますが、あわせて答弁をいただきたいというふうに思います。

●内海隆明総務部長

県民葬についての再々質問です。
改めて法的根拠についてのお尋ねがございましたが、地方自治法第2条第2項におきまして、「地方公共団体は地域における事務を処理する」と規定されており、県民葬はこれに含まれると考えております。
県民葬を実施する考え方でありますけれども、故安倍元総理におかれては、憲政史上最長の長きにわたって内閣総理大臣の重責を務められ、我が国はもとより、県政の推進にも大変なお力添えをいただいたこと、また多くの県民の皆様が哀悼の意を示されていることを踏まえ、最も深く哀悼の意を表する形として、これを執り行うことが適当であるというふうに考えております。

土地利用規制法について

◎木佐木大助

2つは、重要土地等調査法、いわゆる土地利用規制法についてです。
米軍・自衛隊基地などの周辺住民を監視下に置く土地利用規制法が20日、全面施行されました。
同法は米軍・自衛隊基地や原発などの周辺1キロメートルや国境離島を「注視区域」などに指定し、所有者や使用者を監視・情報収集して、「機能阻害行為」があれば使用中止を勧告・命令できるというものです。
しかも、何が「機能阻害行為」に該当するのか法律上の規定がなく、首相の判断や政令に委ねられています。また、「情報収集」と称して、住民間の監視・密告が奨励されています。
年内にも区域指定が始まるとされ、県内の米軍、自衛隊基地を抱える地域では懸念が高まっています。指定される区域をどう想定し、県はどう対応されるのか、お尋ねします。
また、県民を監視し、県民の権利を著しく制約することや、不動産取引にも重大な影響を与えるようなことがあってはなりませんが、見解を伺います。

●松岡正憲総合企画部長

重要土地等調査法についての2点のお尋ねにお答えします。
お示しの重要士地等調査法に規定する注視区域等は、防衛関係施設等の周囲概ね1帥の区域内や国境離島にある土地等であって、機能阻害行為の用に供されることを特に防止する必要があるとして国が指定するものであり、県内でも、その指定が行われる可能性があると考えています。
指定に当たっては、国から県に対し、事前に意見聴取が行われるとともに、指定された場合には、必要に応じ国士利用計画法に基づく届出等の資料提出が求められることとなりますが、県としては、法令の規定とその具体的な内容を定めた基本方針に沿って、適切に対応してまいります。
また、法による措置は、注視区域内にある土地等が機能阻害行為の用に供されることを防止するため、必要最小限度のものにしなければならないとされ、基本方針では、国民の自由と権利を不当に制限することがないよう留意するとされていることから、国において、これらに沿った適切な運用が行われるものと考えています。

米軍岩国基地ー燃料タンクの増強計画について

◎木佐木大助

質問の第2は、米軍岩国基地についてです。
1つは、基地内の燃料備蓄量を5倍に増やし、中型タンカー接岸のためのふ頭整備が計画されている問題です。
米陸軍工兵隊日本地区等の資料によると、基地内にある159万㍑の燃料タンク3基を解体し、795万㍑の燃料タンク3基が新造されます。貯蔵能力は477万㍑から2385万㍑へ5倍に増強されます。加えて、基地南東部の港湾施設に中型タンカーが着岸できる係留施設や桟橋を設けることも計画され、今年10月以降に事業者の募集が始まる、としています。
燃料タンク増設の必要性について、米側資料は「岩国飛行場の現在の燃料貯蔵量は、必要量の34%。不測の事態には機能しない」と説明しています。
既存の燃料タンクは、空母艦載機移駐のための拡張工事に伴って整備されたものです。その規模は艦載機約60機を含む約120機の運用に必要な貯蔵量を前提に決められたはずです。にも関わらず「貯蔵量は、必要量の34%」ということは、岩国基地では現状より3倍近い航空機の運用が可能な規模に増強されるということを意味するのではありませんか。お尋ねします。
この問題は、日本共産党の井上哲士参議院議員が今年5月17日の外交防衛委員会で取り上げています。
井上議員は、インド太平洋地域で中国に対抗して戦力増強を図る太平洋抑止イニシアチブ(PDI)に関して、米国防総省が4月までに米議会に提出した長期計画のなかで、「岩国基地での貯蔵能力の補強は、インド太平洋地域における兵たんを改善して、同地域における戦略的な途中給油作戦、戦略的空輸及び戦力投射を可能にする」と記されていることを指摘し、政府の認識を質しました。
これに対し、岸防衛相は「インド太平洋地域における現在の米軍の兵たん体制、能力は、特に紛争下での作戦を支えるには不十分であるという旨の記載があり、在日米軍岩国基地や横田基地への燃料貯蔵タンクの調達などが予算案に含まれていると承知をしている」と答弁しています。
岩国基地の燃料貯蔵能力を5倍に増強する動きは、インド太平洋地域での軍事衝突に備えるためであることは明らかです。こんな危険極まりない計画は中止を求めるべきです、伺います。

●近藤和彦総務部理事

米軍岩国基地についての数点の御質問のうち、まず、燃料備蓄を拡大しようとする計画に関する2点のお尋ねにまとめてお答えします。
国に対して、当該計画の事実関係を照会したところ、「米側に情報を求めているところであり、米側からお知らせできる情報が得られれば、関係自治体に情報提供してまいる」との回答を得ているところです。
県としては、引き続き、情報収集に努め、地元市町と連携しながら、適切に対応してまいります。

◎木佐木大助

岩国基地について伺います。県議会は5年前の2017年6月議会で「空母艦載機部隊の移駐に関する意見書」を賛成多数で採択しています。
同意見書の第1項には、「新たな部隊の移駐等により、航空機騒音や安全性等の面で基地周辺住民の生活環境が現状より悪化することは容認できない」とあります。
2017年度当時と2021年度のW値75以上の航空機騒音回数を比較すると、岩国市川口町1丁目では7269回から10,738回と1.5倍、同市尾津町5丁目では8252回からなんと13227回と1.6倍に激増しています。
この事実は、この意見書が「容認できない」とした、「周辺住民の生活環境が現状より悪化」している、この証明であり県議会の意思をも踏みにじるものと考えますが、お尋ねします。
そして、米軍は、現状より、さらに多くの航空機の運用を可能にするため燃料貯蔵量を5倍に増やす工事に取り掛かろうとしています。こんなことは断じて容認できません。キッパリと反対の意思を国及び米軍に伝え、中止させるべきですが、この点も伺います。

●近藤和彦総務部理事

再質問にお答えします。2点あったかと思います。
まず、平成29年6月議会における空母艦載機部隊の移駐に関する意見書についてです。
御質問にありました、この意見書にあります条項「基地周辺住民の生活環境が現状より悪化することは容認できない」。この「現状より悪化する」というところでございますけれども、このことにつきましては、沖合移設前の平成18年に国から米軍再編案が提示され、当時の状況と沖合移設後に再編案が実施される場合との比較により、基地周辺住民の生活環境への影響について検証するものというふうに理解しております。
そうした場合に、平成29年の移駐判断時や移駐後においても、再編案が提案された平成18年当時と比べて、住民の生活環境が全体として悪化している状況にはないことから、県議会の御意思が踏みにじられているとは考えておりません。
次に、燃料備蓄の御質問についてです。色々御質問にありましたけれども、貯蔵量を5倍に増やす工事だとか、こういった計画について、県としては承知をしておりません。そのため、国に照会しているところです。
したがいまして、先ほども御答弁を申し上げましたけれども、現在、国において米側に照会中ですので、事実関係が分かり次第、地元市町と連携しながら、適切に対応してまいります。

米軍岩国基地ー用地返還について

◎木佐木大助

2つは、岩国基地提供用地の返還問題です。
岩国市は1996年度以降、都市計画道路・昭和町藤生線の全通のため、未整備区間を含む約5ヘクタールの返還を国に要望し、県も1997年度以降政府要望を行うなど、市の取組を支援してこられました。
この問題を私が、2011年6月議会で取り上げた際、県は「国から岩国市に対し『返還予定地にある基地内の学校は、現在の駐機場を移設した跡地に移設する。それによって、5㌶の返還がなされる』旨の説明があったと聞いており、今後、岩国基地内の施設整備の進捗に伴い、返還が進むものと考えている」と答弁されています。
この答弁から11年が経過しました。なぜ未だに返還が実現していないのか、明確な説明を求めます。

●近藤和彦総務部理事

次に岩国基地提供用地の返還問題についてのお尋ねにお答えします。
当該用地については、学校施設の解体等が順次行われ、令和2年2月に整地が完了したところです。
また、岩国市からは、「早期に市民が有効に活用できるよう、返還という選択肢だけでなく、共同使用も視野に入れ、現在、国を窓口として協議・調整を行っている状況」と聞いています。

新型コロナ対策について

◎木佐木大助

質問の第3は、新型コロナ対策についてです。
1つは、政府が26日から踏み切った感染者の「全数届出の全国一律の見直し」です。
見直し後、「発生届」の対象は、①65歳以上、②入院を要する、③重症化リスクがあり、かつ新型コロナ治療薬の投与または酸素投与が必要、④妊婦、に限られます。症状が軽い人、重症化リスクの低い感染者についてはセルフチェックで、自宅療養者フォローアップセンターへの登録となり、保健所の健康観察の対象外になります。
懸念する1つは、軽症者が自宅療養中に重症化しても、自己申告のため見逃される恐れです。2つは、保健所からの指示がないことで、患者自身が自分の判断で出歩き、感染を拡大させる恐れです。3つは、新たな変異株を見落とす恐れです。
また高齢者施設では、入院が必要な患者が施設内に留め置かれる事態が多発し、死亡者数が増えているのに、「施設内療養に対する支援強化」が打ち出されたことで、死亡者がさらに増えることも懸念されます。
こうした懸念が顕在化させることは絶対あってはなりません。県はどう対応されるのか、伺います。

●村岡嗣政知事

私からは、新型コロナ対策に関して、全数届出の見直しについてのお尋ねにお答えします。
今回の見直しにより、若い軽症者等については、発生届の対象外となることから、私は、「自宅療養者フォローアップセンター」の機能強化により、健康相談や生活相談等に24時間対応できる体制を確保し、安心して自宅療養できる体制を構築したところです。
まず、自宅療養中の方の重症化を見逃さないため、センタに確実に登録をしていただけるよう、医療機関の協力の下、診断時に、医師から直接本人に登録を促すとともに、容態急変時にはセンターに連絡していただくよう、個別に説明し、徹底を図ることとしています。
また、自宅療養者の療養中の過ごし方についても、不要不急の外出を控えるなどの注意事項を記載したリーフレットを作成し、医療機関での受診時等に、必ず本人に伝えることとしています。
次に、新たな変異株への対応と高齢者施設内での療養についてです。
今後も、コロナウイルスは変異を繰り返すことが懸念をされることから、変異株の出現を速やかに検知するため、引き続き、県環境保健センターでウイルスのゲノム解析を実施し、変異株の発生動向を監視してまいります。
また、重症化リスクの高い高齢者施設に対する支援については、県では、医師や看護師などで構成するクラスター対策チームを施設に派遣し、ゾーニング等の的確な初動対応をはじめ、診療察や治療等を行っているところです。
私は、県民の命と健康を守ることを第一に、全ての陽性者が、安心して療養していただけるよう、医療機関等と緊密な連携の下、新型コロナ対策に万全を期してまいります。

◎木佐木大助

2つは、救急搬送困難事案をなくすことです。
同事案は、119番通報を受けて現場に駆け付けた救急隊が、医療機関への受入れを4回以上、照会し、かつ現場に30分以上の滞在を余儀なくされたケースです。
県内12消防本部では、感染拡大の第7波に襲われた7月4日から9月11日の間に、637件あり、うちコロナ疑いは224件、報告されています。こんなにも救急搬送困難事案が発生した要因をどう分析されているのか、お尋ねします。
医療機関や県の努力もあり、コロナ患者が受け入れ可能な病床は増えていますが、医療従事者にも感染が広がり、病床があっても受け入れられない事態が生じたことも要因の一つと考えますが、いかがですか。

●弘田隆彦健康福祉部長

次に、新型コロナ対策についての御質問のうち、救急搬送困難事案に関する2点のお尋ねに、お答えします。
お示しの期間においては、本県も全国と同様、感染力の非常に強いオミクロン株の流行による、医療従事者を含めた感染者数の急増はもとより、猛暑による熱中症患者の発生、お盆期間による医療機関の休診など、様々な要因が重なって発生したものと考えています。
県では、これまで、救急搬送困難事案の抑制にもつながる感染患者受入病床を確保するとともに、国の通知に基づき、救急車の適正利用を各消防機関を通じて県民の皆様に周知をしてきたところであり、引き続き、各消防機関とも連携して取り組んでまいります。

◎木佐木大助

人口1千人当たりの病床数を見ると、アメリカ2.9床、イギリス2.5床に対し、日本は13床と圧倒的に多いものの、医師数は2.4人と、OECD加盟国38か国の平均3.5人より少ないため、長時間過密勤務が日常化しています。将来も見据えて、国に対し医師を大幅に増員するよう求めるべきと考えますが、見解を伺います。

●弘田隆彦健康福祉部長

県としては、国に対し、今後の新興感染症の流行に備えて、これまで以上に医師が必要であることや、医師の働き方改革を十分に配慮した医師需給推計を策定することなど、地域の医療提供体制に必要となる医師の確保について、全国知事会等を通じて要望しているところです。

上関原発問題について

◎木佐木大助

質問の第4は、上関原発計画についてです。
中国電力が国に、上関町への原子力発電所建設のための原子炉設置許可申請を行った2009年12月から13年を迎えようとしていますが、2011年3月11日の福島原発事故以降は審査もストップしたままです。中国電力自身、新規制基準を満たしていない申請書を10年以上、棚ざらしにしています。
中国電力は島根原発2号機の再稼働と3号機の稼働をめざしていますが、新規制基準を満たすための安全対策費は当初の1千億円から6千億円へ5千億円も膨らみました。上関では2機の原子炉建設を計画し、1機当たりの建設費を4500億円と見込んでいましたが、追加して必要となる安全対策費を含めれば2兆円を超える資金が必要になると考えられます。
折しも、中国電力は13日、23年3月期の連結純損益が1390億円の赤字になる見通しを発表しました。前期の約400億円を超えて、過去最大です。年間配当は1951年の創業以来、初めての無配になる予想です。前期の内部留保(利益剰余金)は3938億円でした。
燃料価格の高騰の要因であるウクライナ危機は長期化が予測され、岸田内閣の失政による異常な円安にも歯止めがかかる見通しもありません。
来年1月には、公有水面埋立免許の竣功期限を迎え、中国電力は再び延長申請することが予測されます。その際は、「出願人が埋立を遂力するに足る資力及び信用を有するか」も厳正に審査すべきと考えます。現時点での中国電力の経営状態の評価も含めて、お尋ねします。

●和田卓土木建築部長

上関原発計画についてのお尋ねにお答えします。
公有水面埋立法において、許認可を行う場合、提出された申請書に基づき判断することとされており、県としては、申請がなされた場合には、その時点において、法に従って正当な事由の有無を厳正に審査し、適正に対処します。
なお、中国電力の経営状態の評価については、埋立免許権者としてお答えする立場にありません。

◎木佐木大助《再質問》

中電株主への配当が無配となったことについて、山口県はどのように捉えているか、具体的な損害はどの程度あるか、あらためて伺っておきたいというふうに思います。
原発問題には、先ほどあらためて答弁を求めました。同時に関連して、これまで山口県は中電の株主総会で県民の共有財産である3千4百万株の議決権行使を白紙で提出する、そして上関原発推進を悲願とする中電方針を、諸手を挙げて賛
成してきました。その結果が無配当という結果であります。
資力も信用もないことが今や明らかになった今日、責任あるほぼ筆頭株主、大株主である山口県は、中電に「上関原発建設は撤退せよ」、こういうふうに進言すべきであります。この点についても伺いたいと思います。

●内海隆明総務部長

まず上関原発計画についての再質問から一括してお答えします。
中国電力株が無配となることによる配当金収入への影響についてのお尋ねです。
中国電力株の配当金につきましては、本年度当初予算におきまして、17億円の歳入を見込んでいたところであります。
中国電力が発表した2023年3月期通期の配当予想どおり無配となった場合、本年度の歳入は5億円程度となる見通しであります。
次に株主として中国電力に上関原発計画からの撤退を進言すべきではないか、とのお尋ねです。
県としましてはこれまでも、株式の所有と会社の経営とを分離して考え、経営への関与・参画は行わないとの基本姿勢で対応してきたところであり、株主として、中国電力の経営方針に関して意見を述べることは考えておりません。

◎木佐木大助議員《再々質問》

中電の株主の問題については、やっと先ほど答弁がありましたが、株主総会で議決権行使を白紙提出する、これではますます中電が経営破綻に陥っていく道ではないでしょうか。
原発事故が起こる前、まだ原発の安全神話が成り立っているのんきな時代とは今日は違います。
私たち、中電株は県民の共有財産、これをきちんと保全するためにも言うべきことは言う、この点もあらためて答弁を求めます。

●内海隆明総務部長

上関原発について、株主としての立場として進言すべきではないか、との再度のお尋ねでありますけれども、繰り返しになりますが、県としましては、これまでも、株式の所有と会社の経営とを分離して考え、経営への関与・参画は行わないとの基本姿勢で対応してきたところであり、株主として、中国電力の経営方針に関して意見を述べることは考えておりません。

木屋川ダム再開発事業について

◎木佐木大助

質問の第5は、木屋川ダム再開発事業についてです。
下関市豊田町にある木屋川ダムは、治水、利水、発電の機能をもつ多目的ダムとして1955年に完成しましたが、その後も下流域では浸水被害が相次ぎ、2010年7月の豪雨では甚大な被害が発生しました。
再開発事業は、浸水被害の軽減等を目的に、現行41㍍のダム堤高を約51㍍に嵩上げする計画で、1973年に実施計画調査に着手しました。1997年、当時の建設省の「ダム事業総点検」により「足踏みダム」とされて中断しましたが、2008年度予算に国交省が調査費を盛り込んだことで復活し、2009年度から同事業が再スタートしました。総事業費は約400億円、完成予定は2039年度と見込まれています。
同事業について県は8月10日、下関、長門両市の地権者協議会との基本協定に調印し、今後、地元説明会や現地測量に着手するとしています。
わが党は従前からダムに頼らない治水対策への転換を求めてきました。その視点から同事業には疑問をもたざるを得ません。
1つは、嵩上げによる効果です。
2020年8月21日に開催された公共事業評価委員会で、県は2010年7月豪雨について、「平成22年は、木屋川ダム上流域ではあまり降雨がなく、ダムより下流域で豪雨になった」、「そのため、この洪水では、旧豊田町の日野川周辺と旧菊川町で浸水被害が多数発生した」と説明しています。
ダム堤を嵩上げして貯水能力を高めたとしても、下流域で豪雨に見舞われたら、浸水被害は避けられないのではありませんか。お尋ねします。
2つは、川の合流地点で水の逆流が起こる「バックウォーター現象」です。
豊田、菊川地域には、木屋川に合流する稲見、山本、日野、田部、貞恒の5河川があり、同現象の発生が心配されます。この点も評価委員会で議論され、県は「未改修の箇所があれば、バックウォーター現象が起こる可能性はある。詳細については把握していない」と答えています。現時点で、同現象が起こる可能性はあるのか、お尋ねします。
3つは、事業費の算定です。
ダム建設費は当初見積もりを大幅に超えることが問題化しています。完成間近の平瀬ダムも当初350億円の事業費が最終的には920億円と約2.6倍化しました。今後、400億円としている木屋川ダム再開発の事業費も膨張することは避けられないと考えますが、お尋ねします。
以上、指摘した疑問点を踏まえると、再開発事業は再検討し、ようやく国も取り組み始めた「流域治水」、すなわち「水があふれることを前提にして、水を貯められる場所をたくさん確保したり、危険な場所に住まないようにしたり、あらゆる対策を組み合わせて被害を小さくする」対策に転換すべきです。見解を問います。

●和田卓土木建築部長

まず、ダムを嵩上げしても、下流域で豪雨に見舞われたら、浸水被害は避けられないのではないのか、についてです。
ダムの下流域のみが豪雨となるような場合は、ダムの効果は限定的ですが、治水対策においては、そのような特定の豪雨を対象とするのではなく、過去に流域内で大きな被害をもたらした様々な豪雨に対応できるよう検討することとしています。木屋川水系の治水対策については、平成22年の豪雨だけでなく、昭和34年や平成11年の豪雨などにも対応できるよう検討した結果、ダムの嵩上げと河川改修の組み合わせで対応することとしました。
次に、現時点で、バックウォーター現象が起こる可能性があるのか、についてです。
バックウォーター現象とは、本川の増水により、支川の水がせき止められ、流れにくくなった結果、支川の水位が上昇する現象であり、バックウォーターによる浸水被害は、想定を超える降雨となった場合、木屋川水系だけでなく、どこでも起こりうるものです。
次に、400億円としている木屋川ダム再開発の事業費も膨張することは避けられないのではないか、についてです。
木屋川ダム再開発事業に係る事業費については、必要額を積み上げたものであり、現時点で見直すことは考えていません。
次に、再開発事業は再検討し、「流域治水」対策に転換すべきではないか、についてです。
県では、減災対策協議会の中に設けた流域治水部会において、関係機関と連携し、本年2月に策定した木屋川水系の流域治水プロジェクトの中で、木屋川ダム再開発事業を経済的で治水効果の高い主要な事業として位置付け、現在、その取組を推進しているところです。
このため、木屋川ダム再開発事業について、再検討することは考えていません。

◎木佐木大助《再質問》

木屋川ダムの問題ですが、2009年度当時に算定された、同再開発事業の事業費400億円は、膨張することは避けられません。2020年度時点での、費用対効果分析では費用の約240億円に対し、便益は330億円で費用便益比は、1. 4倍でした。費用便益比が1以下の場合は、事業の見直しが求められると考えますが、この点についてはいかがでしょうか。お尋ねします。
本事業の場合、仮に費用が100億円増えれば、費用便益比は 1を割り込んで しまいます。そうした場合は、事業見直しを余儀なくされると考えますが、改めて伺います。
木屋川においても未改修の箇所ではバックウォーター現象により、浸水被害が発生する可能性があると、こういう答弁でした。資料に示しましたように、木屋川の河川整備計画の進捗は全体事業費の66億5200万円に対し、12億7700万円と19%にとどまっています。バックウォーター現象を未然に防ぐため、河川改修のスピードを早めるべきと考えますが、どう対処されるのかお尋ねします。
また、今後の河川堤防については、越水しても崩れにくい耐越水堤防を積極的に取り入れるべきだと考えますが、お尋ねします。

●和田卓土木建築部長

木屋川ダム再開発事業に係る事業費につきましては、必要額を積み上げたものであり、現時点で見直すことは考えておりません。
なお、一般的に、事業費を見直す場合には、山口県公共事業評価委員会で事業の必要性、経済性、社会性等を審議していただき、事業の継続の可否についてご意見を伺ったうえで、適切に判断することになります。
それから次に、河川改修のスピードを速めるべきではないかとのお尋ねです。県では、水系ごとに河川整備計画を策定し、計画に位置付けた治水対策を、過去の被災状況、また、背後の士地利用状況等を勘案し、緊急性の高い箇所から進め
ているところです。
木屋川水系につきましても、同様の考えに基づき行っているところであり、引続き河川改修を着実に進めてまいります。
次に、耐越水堤防を積極的に取り入れるべきではないかとのお尋ねについてです。耐越水堤防とは、堤防を越水することに対して一定の安全性を有するよう、堤防の表面をコンクリート等で被覆するなどの対策により、流下の能力をより高めることができる堤防のことをいいます。
当該堤防につきましては、土木学会が、「安全性確保の観点からすると、現状では技術的に見て困難」との見解を示していることから、県では、耐越水堤防の整備を検討することは考えていません。

特牛市場の製氷施設について

◎木佐木大助

質問の第6は、漁業問題についてです。
下関市特牛市場の製氷施設について伺います。
特牛市場は、下関市の水産物5大ブランドの一つ、特牛イカの水揚げ拠点です。往時は約38億円あった年間取扱額は、2020年度、約14億円に減少していますが、今なお地域産業にとってなくてはならない重要な市場です。
しかし、同市場や近隣漁業者に氷を供給してきた「有限会社・特牛製氷所」が7月末で事業廃止となり、県漁協と角島漁協が共同出資して設立された合同会社が既存施設を買い取り、運営を引き継ぎました。
特牛市場を継続していくには製氷施設を欠くことはできません。同社は、既存施設の機能維持のための補修や製氷施設の新設及び既存施設の解体にかかる支援を下関市等に要望されています。
下関市も支援策について検討されているようですが、県は現状をどう把握されていますか、お尋ねします。
また、県としても地域にとって欠くことのできない特牛市場の維持・発展と漁業関係者を守るため、下関市並びに県漁協とも連携して、できうる限りの支援を検討すべきと考えますが、合わせて伺います。

●高橋博史農林水産部長

漁業問題についての2点のお尋ねにお答えします。
まず、現状の把握についてですが、下関市地方卸売市場特牛市場の製氷施設については、特牛市場に氷を供給していた民間の製氷所が本年7月末をもって事業廃止され、代わって8月より山口県漁協と角島漁協が合同会社を設立し、運営を
引き継がれていると承知しております。
次に、支援の検討についてですが、今後、市場開設者である下関市と漁業関係者において対応が検討されるものと考えておりますが、特牛市場は北浦地域における水産物流通の中核施設であることから、県としても、下関市等から相談があれば、必要な助言等を行ってまいります。

(2022年9月30日)

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