第4号は、「大学生への給付奨学金制度の拡充」を求める意見書の提出をもとめるものです。
大学、高校の学費の段階的無償化は政治の責任
文科省の2016年度「学校基本調査」によれば、高等教育機関への進学率は8割に達しており、その約半数が貸与制奨学金を利用し、多くの学生が多額の借金を抱えて、卒業しています。
安倍政権は、「大学無償化」を実現させるなどと言いますが、学費値上げを抑えることもしません。授業料減免の対象になるのは、文科省の答弁でも、現在の大学・短大・専門学校の全学生の1割程度です。しかも、その財源は消費税増税です。
政府案では、授業料等の減免対象は4人家族で年収270万円程度が上限です。年収380万円未満の世帯も一部対象になりますが、3分の1または3分の2に減らされます。9割近い学生を対象にしない制度を「大学無償化」などと言うことは「看板に偽りあり」です。
OECD加盟国36カ国中19カ国では大学授業料が無償、または有償でも極めて安価です。奨学金については、大学授業料が無償のアイスランドを除くすべての国に給付型奨学金がありますが、日本のように大学授業料が高額で、給付型奨学金が非常に限定的という国はチリ、韓国しかありません。
日本政府は、国際人権規約の大学、高校の学費を段階的に無償化する条項の「留保撤回」を2012年に閣議決定し、国連に通告しました。段階的無償化は、国際公約であり、国民への政治の責任です。
よって、国に対し、教育予算を増やし、大学生に対する給付奨学金制度を拡充するよう求める請願は採択されるべきであり、不採択とした委員長報告に反対します。
(2019年6月28日)
(請願第4号)「大学生への給付奨学金制度の拡充」を求めることについて
文部科学省の2016年度「学校基本調査」によれば、高等教育機関(大学・短大・高専・専修学校)への進学率は8割に達している(過年度高卒者等を含む)。その約半数が貸与制奨学金を利用し、多くの学生が多額の借金を抱えて卒業している。
2018年度から大学生への「給付型奨学金」が本格実施されているが、対象者が非課税世帯に限定された上に給付額も低く、決して十分なものとは言えない。「給付型」を拡充するとして「大学等における修学の支援に関する法律案」がつくられようとしている。
しかし、対象が非課税世帯と準ずる世帯に広げられるものの一部に限定される点は変わらず、入学後学生に厳しい「個人要件」を課すなど大きな定員割れが続く問題がある。加えて、大学等に対する「機関要件」を新たに設け、高等教育を「研究より実務教育」に偏重させようとし、また、定員割れや経営に問題のある大学等を対象外とするなど、経済優先の高等教育に変質させようとしている。さらに、財源を消費税増税に頼る点は重大な問題である。
文科省は2018年度入学生から「新たな所得連動返還型奨学金制度」を導入した。これは大学卒業後の所得に応じて月々の返済額を決める制度で「奨学金返還の負担を軽減するため」と説明しているが、マイナンバーの導入を前提としている点や収入ゼロでも毎月2,000円の返済を求めたり、第2種(有利子)や現在返還中の者には適用されないなど、多くの問題を持った制度である。
奨学金は給付が基本であり、貸与の奨学金は「教育ローン」と同じである。日本政府が2012年9月に留保撤回した国際人権規約が求める無償教育を実現するためにも、給付制奨学金の充実こそ必要である。
OECD加盟36カ国中19カ国では大学授業料が無償または有償でも極めて安価である。奨学金については、大学授業料が無償のアイスランドを除く全ての国に給付奨学金がある。しかし、日本のように大学授業料が高額で給付奨学金が非常に限定的という国はチリ・韓国しかない。
日本の「教育機関への公財政支出の対GDP比(2015年度)」は2.9%でOECD諸国36カ国中、最下位となっている。段階的にOECD平均並みの4.2%まで引き上げていけば、就学前から大学まで教育の無償化を進めることが可能となる。一日も早く、公私ともに高校・大学の無償化を前進させ、社会全体で高校生・大学生の学びを支えることが強く求められている。
以上のことから、下記事項について、国に対し意見書を提出されるよう請願する。
記
国は、教育予算をふやして、大学生に対する給付奨学金制度を拡充すること。