定款変更の認可が生んだ下関市立大学での「異常事態」
木佐木議員は、昨年11月、県が下関市立大学の定款変更を認可したことを契機に、同大学で異常事態が加速していることを明らかにし、県に適切な対応を求めました。
同市立大では、下関市長が2019年度に特定研究者を推薦・採用したことを発端に、学校教育法や文科省通知に違反している疑いのある採用が横行しています。
さらに今年度には、下関市長の推薦で採用された教授(ハン・チャンワン氏)が、理事、副学長、教員人事評価委員会委員長、教員懲戒委員会委員長という要職を兼任した結果、同教授に権限が集中し、一方で、教授会、教育研究審議会からの権限剥奪が進んでいます。
そして今日、事態は「経済学部存続の危機」にまで発展しています。
1つに、市大図書館が511万円で購読してきた経済学に関する54の外国語雑誌のうち、48種の購読が中止され、491万円分の経費が削減されました。通常、研究者は、外国雑誌含めて「雑誌論文」を利用するとき、当該雑誌に掲載された論文のうち「自分が今必要な論文だけ」コピーして利用するのが常識です。経済学の研究教育機関として、経済学に関する外国語雑誌がなくなる事は致命的でです。
2つに、下関市立大学経済学部は、昨年と今年、経済学の基幹科目である「マクロ経済学」、「国際貿易論」、「経済地理学」、さらに「人事労務管理論」、「日本経済史」の専任教授が他大学に流出したにも関わらず、これら経済学の専門科目について1件も補充人事が予定されていません。
代わりに、昨年と今年、下関市長の推薦で赴任した教授と同じ研究グループの教育学関連の5名の研究者が、公募や教授会の意見聴取・資格審査を経ることなく、学長専決で採用されています。経済学の研究教育機関として、経済学専門科目の担当者が5名もいない事は異常です。市立大学経済学部は存続の危機にあり、まさにこれを放置してきた大学のガバナンスそのものが問われています。
木佐木議員は、「市立大学の設置者である下関市長が『腹心の友』を優遇し、そのために教授会、教育研究審議会が持っていた権限を奪い、独裁体制をつくる。そして、これまで営々と築かれてきた市立大学経済学部の評価も実績も投げ捨てる。これは、学問の自由と大学の自治破壊そのものであり、市民の共有財産である市立大学の下関市長による『私物化』そのものだ。この事態をどう認識しているのか」と厳しく質しました。
「予算執行、教員人事は大学が主体的に判断し、対応されるもの」
平屋隆之総合企画部長は、「地方独立行政法人法の規定に照らし、県としては、大学の予算及びその執行や人事について、指導・助言を行う権限を有しておらず、また、大学においても、県への報告は法令上求められていないことから、お尋ねの雑誌の購入中止や教員人事について、認識を申し述べる立場にはない。また、大学の運営に当たり、どのように予算を執行し、あるいは、教員人事を行うかについては、大学において主体的に判断し、対応されるものと考えている」と強弁しました。
「定款変更を認可した責任は重大。正常化に向け、可能な対応を」
2019年11月議会において、木佐木議員は、県が同年10月、教育研究審議会から教育研究に関わる重要規程の改廃権と教員の人事権、懲戒権を取り上げることなどを内容とした下関市立大学の定款変更を認可した県の対応を厳しく非難しました。
これに対し県は、「経営審議会の審議事項の変更など、定款を変更する理由が明らかであり、その内容も教育研究の特性に配慮したものとなっているから基準等を満たしていると判断し、認可を行った」と強弁しました。
この事実を踏まえて木佐木議員は、「この定款変更を県が認可したことで、市立大学の存立を危うくする事態が起きている。県の責任は極めて重大だ。市立大学が、この危機を乗り越え、正常化が図られるよう、県としてしっかりと注視し、可能な対応をとることは、定款変更を認可した県の責任ではないか」と再度、迫りました。
「地独法等の関係法令に基づき必要な対応を行う」
平屋総合企画部長は、「定款変更については、地方独立行政法人法の規定や国に準じて定めます県の基準に基づいて審査を行った結果、基準を満たしていると判断をして、認可をしたもの。先ほど答弁をいたしましたが、大学運営に当たって、どのようにその予算を執行し、人事を行うかについては、大学において主体的に判断をし、対応されるものという風に考えている」と繰り返した上で、「下関市立大学の経済学部の正常化が図られるように県として可能な対応をとることが、定款変更を認可した県の責任と考えるがどうか、 というお尋ねですが、県としては、地方独立行政法人法等の関係法令に基づいて、必要な対応を行っていく」と今後の対応に含みをもたせました。
(2020年12月3日)