米軍岩国基地での感染確認は初めて
米軍岩国基地の米国人家族3人が新型コロナウイルスに感染したことが7月13日夜、確認されました。同基地で感染者が確認されたのは初めてです。
3人は米国から12日に羽田空港に到着し、検疫所でPCR検査を受けましたが、検査結果が判明する前の13日朝、羽田空港から全日空機で岩国錦帯橋空港に移動し、自家用車で岩国基地内の自宅に戻りました。3人は家族で、40代の男女2人と、10代未満の女児です。
3人の感染が判ったのは13日午後7時半頃。日米合同委員会の合意に基づき、岩国基地から県岩国健康福祉センターに連絡がありました。同日午後9時過ぎには、米軍岩国基地が「基地内の複数名が新型コロナウイルスに感染したと外務省から連絡を受けた」と発表。山口県も午後10時半頃、同基地からの連絡に従って発表しました。
地位協定により審査なしに入国可能
日本政府は感染症危険情報で、米国を4段階で2番目に高い「レベル3」(渡航中止勧告)に指定。入国審査でそれらの国や地域からの入国は原則拒否しています。しかし、米軍人や軍属とその家族は、日米地位協定9条(*)に基づいて入国審査を受けず入国できるため、入国を拒否できないケースがあります。
(*)日米地位協定第9条「合衆国は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族である者を日本国に入れることができる」。
感染症対策で日本も、米軍も「14日間の待機」がルール
一方、新型コロナウイルスの感染防止策として、現在、過去14日以内に入管法に基づく「入国拒否対象地域」に滞在歴がある場合は、全員にPCR検査が実施され、検査結果が出るまで、自宅等で待機することが求められ、自宅待機する場合も「公共交通機関を使用せずに移動できる」ことが条件です。検査結果が「陰性」でも入国した次の日から起算して14日間は自宅等での待機が求められています。
また、米海兵隊岩国航空基地の「感染症に関するルール」でも、「海外から日本に帰還した者には14日間の外出制限が課せられ、海軍診療所による診察を完了しなければならない」と定められています。
「虚偽申告は極めて由々しき事態」
河野太郎防衛大臣は14日夜、「感染が確認された3人は入国の際、『公共交通機関は使わず、レンタカーで移動する』と申告していたにも関わらず、民間の航空機で移動した。虚偽申告した」と明らかにし、「極めて由々しき事態で、アメリカ側に厳格な処分と再発防止の徹底を申し入れた」と述べました。
これを受け、村岡嗣政知事は「虚偽の申告をして、ルールを破るというのはとても信じられず、許しがたいことだ」と述べ、福田良彦岩国市長も「感染拡大を引き起こしかねない行動で非常に遺憾。二度と起こらないよう強く要請していく」と述べました。
検疫で国内法適用緊急に
《解説》日本は現在、コロナの水際対策として米国からの入国を原則禁止していますが、前述のように日米地位協定は、米軍が日本に自由に入国できることを定めています。
同協定の実施について協議する日米合同委員会が1996年に結んだ「人、動物及び植物の検疫に関する合意」は、米軍関係者などが航空機や船舶で在日米軍基地から日本に入国する場合の検疫は、米軍の医官が必要な時に実施するとしています。完全に米軍任せです。
米国防総省の発表によると、米軍全体のコロナ感染者数は10日現在、軍属や家族などを含め、2万3842人にも上っています。コロナに感染した米軍関係者などが在日米軍基地や民間空港等から入国してくる可能性は極めて高いにもかかわらず、日本の国内法は適用できず、日本側が検疫できないのが実態です。
山口県をはじめ米軍基地を抱える15都道府県で構成する渉外知事会はこれまでも、基地周辺住民の不安を払拭するため、国内法を適用し、米軍に対しても日本側による検疫を実施する必要があると政府に要請しています。
米軍の治外法権的な特権を認める日米地位協定は全面的な見直しが必要です。しかし、コロナ対策として、検疫について日本の国内法が適用できるようにする緊急の改定が強く求められます。
(2020年7月16日)