「確実な安全策は周辺に住宅を造らないこと」
「ブースターはコントロールできる」という防衛省の説明が「フェイク」だったことは、米軍側の証言からも明らかです。
「統計に基づく落下予測はあるが、100パーセント想定の範囲内に収まるとは言えない。最も確実な安全策は、基地の周りに住宅を造らないことだ」。
これは、世界で唯一、イージス・アショアが実戦配備されているルーマニアの米軍デべセル基地の司令官が、取材記者に述べた証言です。
取材したのは、もう一つの配備予定地・秋田市を拠点にする秋田魁(さきがけ)新報社。2018年10月中旬、ルーマニアとイージス・アショアの配備が進められているポーランドを現地取材し、「東欧の地上イージス」と題する連載記事を掲載しました。
基地司令官の証言は、連載3回目の記事で紹介されており、米軍はルーマニア政府に対し、基地周辺にブースターが落下する危険性を説明している、とも報じています。ちなみに、同基地から一番、近い集落は約3キロ離れた人口約3150人のデベセル村と紹介されています。
「日米間の協議内容を明らかにすべき」
こうした事実を踏まえ、冒頭で取り上げた6月22日の参院決算委員会で、日本共産党の井上哲士参院議員は、次のように追及しました(一部要約)。
〇井上哲士君 最も確実な安全策は基地の周りに住宅を造らないことだと。これが世界で唯一実戦配備されているこのイージス・アショアの米軍の基地の司令官の言葉なんですよ。これがむしろアメリカ側の認識だったということではありませんか。
〇国務大臣(河野太郎君) アメリカ側の認識についてお答えする立場にございません。
〇井上哲士君 (アメリカ側と)検討途中なのにもかかわらず、なぜ安全な配備、運用ができるんだと、こう明言されたのでしょうか。
〇国務大臣(河野太郎君) 当初、ソフトウェアの改修でブースターを演習場内に落下させることができると、そう認識しておりました。
〇井上哲士君 ブースターの安全問題について、どのような協議が行われてきて、アメリカからどのような判断が下されたのかを示していただきたいと言っているんです。
〇国務大臣(河野太郎君) 技術的な協議の内容を外に漏らすことは日米間の信頼関係を壊すことにもなりますので、差し控えたいと思います。
住民を欺き配備を進めようとした責任は重大
これまで明らかにしてきたように、ブースター落下の危険性など考慮しないまま、住宅周辺を「配備適地」と決めつけ、住民から安全について危惧の声が広がったら、検証の段階にすら至っていないのにも関わらず、安全だと断言するなど、住民を欺いて配備を進めようとしてきた安倍政権の責任は重大です。
敵基地攻撃能力保有は憲法蹂躙ー絶対に許されない
ところが、安倍政権は、イージス・アショア導入の破綻という自らの失態を覆い隠すために、敵基地攻撃能力保有について今夏にも国家安全保障会議(NSC)での議論を開始すると表明しました。
攻撃的兵器を保有することは、自衛のための最小限度の範囲を超えることであるから、いかなる場合も許されないとしてきた憲法上の立場を完全に蹂躙(じゅうりん)するものであって、絶対に許されません。
(終)