岩国基地に4万トン超の大型貨物弾薬補給船が入港
山口県は8月24日、米軍岩国基地の港湾施設に米海軍貨物弾薬補給艦カール・ブラシア(CARL BRASHEAR)が8月22日に入港していたことを明らかにしました。
これは中国四国防衛局からの情報提供でわかったこと。
カール・ブラシアは、広島県の因島で定期点検を行った後、22日に岩国基地に入港。目的は、艦上訓練(定期点検後、航海に出る直前に、安全に運行することができるよう準備確認を行うもの)と説明しています。岩国基地を出港する日時は明らかにされていません。
同船は、米空母ロナルド・レーガン等に食料・補修部品・生活物資・武器・弾薬および燃料の補給を行う船舶で、総トン数4万3758、定員は軍人49名、民間人123名とされています。
沖合移設に伴い港湾機能は大拡張
岩国基地の港湾施設は、同基地滑走路の沖合移設事業で大幅に拡張されました。
同事業は、米軍機の騒音を軽減し、基地北側に広がる工業地帯への墜落防止を目的に滑走路を基地沖合1キロに移設したもの。1997年3月に着工し、2010年5月に新滑走路での運用が開始されました。当初1600億円とされた総事業費は2560億円まで膨張しました。
この事業に伴い、水深5m程度だった同基地の港湾施設は水深13m、延長360㍍もの大型岸壁に拡張されました。
「基地機能強化は許されない」が沖合移設事業の大前提
当時も今も、山口県は「基地機能の強化は許されない」という立場をとっています。
沖合移設着工前の1996年6月議会で、日本共産党の中島修三県議は、沖合移設事業によって港湾機能が強化されることは「基地機能強化にほかならない」と厳しく問い質しました。
これに対し当時の平井龍知事は、「(防衛施設庁は)現有の港湾施設は、燃料や補給物資の積みおろし等の機能を有しているが、移設後においてもこの機能は変わることはない。水深が深くなるのは沖合に建設するためであること。また、これまでは沖合で小型船舶に積み荷を移しかえての輸送、あるいは陸送の方法によらざるを得なかったことから、輸送の効率性と作業の安全性を考慮したものであり、現有の機能と何ら変わるものではないので、基地機能の強化ではない、と説明している」と弁明しました。
国は「大型船舶停泊のために建設したものではない」と説明
沖合移設事業が進ちょくしていた2005年9月議会では、日本共産党の藤本一規県議が「移設前の岸壁に米軍艦船が接岸したとは聞いたことがない。沖合移設は、『機能代替』が原則。新たな岸壁への米艦船の接岸は、この原則を逸脱するため、容認できないものと考えるが」と見解を質しました。
当時の奈原伸雄総務部理事は、「県は、かつて岩国基地沖合移設に際し、軍艦等の母港及び寄港地にならないよう、国へ要請した経緯があり、今回、施設の完成に伴い、改めて国の見解を確認したところ、『新しい港湾施設は、現有の港湾施設機能を確保するために移設するものであり、従来どおり燃料並びに補給物資等の積みおろしを行うためのもので、大型艦船停泊のために建設したものではない』という説明を受けた」と答弁しました。
沖合移設完了後、大型船舶が相次いでオスプレイを岩国基地から搬入
ところが、沖合移設完了後、岩国基地の港湾施設には大型船舶が相次いで入港・停泊しています。
これまで明らかになっている事例だけでも、
2012年7月23日には、自動車運搬船・グリーン・リッジ(GREEN RIDGE、総トン数5万7449)が、沖縄県普天間基地に配備されるオスプレイ12機を陸揚げ。
2013年7月30日にも、グリーン・リッジにより、オスプレイ12機を陸揚げ。
2020年5月8日には、グリーン・リッジにより自衛隊木更津航空基地に暫定配備される陸上自衛隊のオスプレイ2機を陸揚げ。
2021年2月14日には、グリーン・リッジが陸上自衛隊のオスプレイ5機を陸揚げ。
岩国基地の港湾機能は「大型艦船停泊のため」に強化された
こうした一連の事実を振り返ると、『新しい港湾施設は、現有の港湾施設機能を確保するために移設するものであり、従来どおり燃料並びに補給物資等の積みおろしを行うためのもので、大型艦船停泊のために建設したものではない』という国の説明は明らかな「虚偽」。岩国基地滑走路沖合移設事業を利用して「大型艦船の停泊のため」に機能強化したことは明々白々です。
(2021年8月29日)